生活習慣病は遺伝?生活習慣?内科医がわかりやすく解説
「親が糖尿病だから、自分もなりやすいのでしょうか?」
外来でよくいただくご質問です。
糖尿病・高血圧・脂質異常症は、まとめて生活習慣病と呼ばれます。
そのため、「食べすぎ」「運動不足」など、生活習慣が原因の病気というイメージを持たれている方も多いと思います。
しかし実際には、遺伝(体質)も大きく関係しています。
今回は、生活習慣病と遺伝・生活習慣の関係について、患者さんにもわかりやすく解説します。
目次
生活習慣病は「遺伝」か「生活習慣」か
結論からいうと、どちらか一方ではありません。
生活習慣病は、遺伝(体質)と生活習慣の両方が関係する病気です。
遺伝・体質
病気になりやすさを左右します
生活習慣
病気を実際に起こしやすくするきっかけになります
たとえば、同じような食生活でも血糖値が上がりやすい方とそうでない方がいます。
塩分を多くとると血圧が上がりやすい方もいれば、あまり変化しない方もいます。
この違いには、もともとの体質が関係しています。
体質があるから必ず病気になるわけではありません。逆に、体質がそれほど強くなくても、生活習慣によって発症することもあります。
「体質」と「生活習慣」が重なったときに発症しやすくなる――これが生活習慣病の本質です。
病気によって「遺伝」と「生活習慣」の比重は違います
ここが、今回いちばんお伝えしたいポイントです。
■ 結論(重要ポイント)
生活習慣病は病気ごとに、「遺伝」と「生活習慣」の影響の受け方が異なります。
遺伝の影響が強い順
① 脂質異常症
② 糖尿病
③ 高血圧
一方で、発症させる力としての生活習慣の影響はこの逆です。
つまり、脂質異常症は体質の影響が比較的強く、高血圧は生活習慣の影響が大きい、という違いがあります。
糖尿病
糖尿病は、遺伝と生活習慣の両方が強く関係する病気です。
特に日本人は、インスリンの分泌があまり強くない体質の方が多いとされています。
そのため、体重増加や運動不足が重なると、血糖値が上がりやすくなります。
ポイント: 糖尿病は、体質をふまえた上で体重管理がとても大切な病気です。
参考文献:日本糖尿病学会 編:糖尿病診療ガイドライン/American Diabetes Association. Standards of Care in Diabetes
脂質異常症
脂質異常症は、3つの中では遺伝の影響が比較的強い病気です。
特にLDLコレステロールが高いタイプでは、体質の影響が大きいことがあります。
中でも家族性高コレステロール血症のように、遺伝が主な原因となる病気もあります。
この場合は、若いころからコレステロールが高く、食事に気をつけていても十分に下がらないことがあります。
ポイント: 「コレステロールが高いのは食べすぎだけ」とは言い切れません。 体質の影響が強い場合には、薬による治療が重要になることもあります。
参考文献:日本動脈硬化学会 編:動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022/家族性高コレステロール血症診療ガイドライン2022
高血圧
高血圧は、もちろん体質も関係しますが、3つの中では生活習慣の影響が大きい病気です。
塩分のとりすぎ、体重増加、運動不足、飲酒、睡眠不足などによって血圧は上がりやすくなります。
ポイント: 高血圧は、生活を整えることが治療そのものにつながりやすい病気です。
参考文献:日本高血圧学会 編:高血圧治療ガイドライン
なぜ家族で生活習慣病が多いのでしょうか
家系に生活習慣病が多いと、「やはり全部遺伝なのでは」と思われるかもしれません。
しかし実際には、遺伝だけではなく、家庭ごとの生活習慣も大きく関係しています。
- 味付けが濃い
- 野菜が少なく、炭水化物や脂っこいものが多い
- 間食や甘い飲み物が多い
- 運動する習慣が少ない
このような特徴は、同じ家庭の中で似やすいものです。
つまり、家族の中で生活習慣病が多いのは、似た体質に加えて、似た食事や運動習慣が重なっていることが多いのです。
逆にいうと、家族歴がある方でも、若いうちから食事や体重、運動に気をつけることで、将来の発症リスクを下げられる可能性があります。
「親がそうだったから仕方ない」とあきらめなくて大丈夫です
生活習慣病は、体質があるからといって必ず発症するわけではありません。
むしろ、家族歴があることがわかっている方は、早めに対策できるという意味で大きなメリットがあります。
次のような方は、一度チェックを受けておくことをおすすめします。
- 親や兄弟に糖尿病・高血圧・脂質異常症の方がいる
- 健診で血糖値、血圧、コレステロールを指摘された
- 体重が増えてきた
- 運動不足が続いている
よくあるご質
まとめ
生活習慣病は、「遺伝」か「生活習慣」か、どちらか一方で決まる病気ではありません。
どちらも関係していますが、病気ごとにその比重は異なります。
そして、発症させる力としての生活習慣の影響はこの逆です。
「家族に多いから仕方ない」とあきらめる必要はありません。
ご自身の体質を知り、今の生活を少し見直すことが、将来の病気の予防につながります。
参考文献
- 日本糖尿病学会 編:糖尿病診療ガイドライン
- American Diabetes Association. Standards of Care in Diabetes
- 日本動脈硬化学会 編:動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022
- 日本動脈硬化学会 編:家族性高コレステロール血症診療ガイドライン2022
- 日本高血圧学会 編:高血圧治療ガイドライン
