腹痛
腹痛の概要
腹痛は、多くの人が経験する一般的な症状です。腹部の痛みはさまざまな原因によって引き起こされることがあり、痛みの場所や性質、強さによって異なる病気や状態が考えられます。急性の腹痛は突然発生し、重篤な病気が原因である可能性があります。一方、慢性的な腹痛は長期間続くもので、しばしば消化器系の疾患や機能障害が原因です。
腹痛の感じ方も個人によって異なり、鋭い痛み、鈍い痛み、刺すような痛み、圧迫感などがあります。痛みが腹部の特定の場所に集中している場合、その場所によって考えられる原因も異なります。
腹痛の原因
腹痛の原因は多岐にわたります。以下に主な原因を挙げ、詳しく説明します。
消化器系の疾患
- 胃炎・胃十二指腸潰瘍:胃の内壁が炎症を起こす胃炎や、胃および十二指腸の内壁に傷ができる胃十二指腸潰瘍は、腹痛を引き起こします。ピロリ菌感染や長期間の薬剤使用(特にロキソニンなどのNSAIDsと呼ばれる解熱鎮痛薬)が原因となります。胃炎や胃十二指腸潰瘍による痛みは、上腹部に感じることが多いです。
- 炎症性腸疾患:炎症性腸疾患は、腸の内壁に慢性的な炎症が起こる疾患の総称で、代表的なものにクローン病と潰瘍性大腸炎があります。これらの疾患は、下痢や血便、腹痛を伴い、遺伝的要因や免疫系の異常が関与しています。
- 感染性腸炎:感染性腸炎は、細菌やウイルス、寄生虫によって引き起こされる腸の炎症です。急性の腹痛、下痢、嘔吐を伴うことが多く、食べ物や飲み物を通じて感染することが多いです。
- 過敏性腸症候群:過敏性腸症候群は、腸の機能に異常がある状態で、腹痛や腹部の不快感、下痢や便秘を伴います。ストレスや食事の影響が大きく関与していると考えられています。
- 急性虫垂炎:いわゆる盲腸(もうちょう)です。初期はみぞおち辺りの痛みでその後、右下腹部の強い痛みが出現します。早期の治療が必要で手術が必要な場合もありす。治療が遅れると、虫垂が破裂し、重篤な腹膜炎を引き起こす可能性があります。
- 憩室炎:憩室炎は、大腸の壁にできた小さな袋状の構造(憩室)が炎症を起こす状態です。下腹部、特に左下腹部に痛みを感じることが多いです。食事に繊維が不足していると憩室が形成されやすく、憩室に便や細菌が詰まることで炎症が起こります。
- 虚血性腸炎:虚血性腸炎は、腸の一部への血流が不足することによって起こる炎症です。下痢や腹痛の後に血便がみられることがあります。
- 腸閉塞:腸が塞がってしまう状態で、腹痛や嘔吐、便秘を伴います。手術が必要になることが多いです。
- 食中毒:食べ物や飲み物に含まれる細菌や毒素によって引き起こされる急性の腹痛です。嘔吐や下痢も伴うことが多いです。
肝臓・胆嚢の疾患
- 急性肝炎:急性肝炎は肝臓の急激な炎症で、ウイルス感染(A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎など)が主な原因です。右上腹部の痛みや不快感、黄疸(皮膚や目の白い部分が黄色くなる)を伴うことがあります。
- 胆石症:胆嚢に胆石が形成されると、激しい腹痛を引き起こすことがあります。特に脂肪分の多い食事を摂取した後に痛みが強くなることが多いです。
- 胆嚢炎:胆嚢が炎症を起こすと、右上腹部に強い痛みを伴います。胆石が原因となることが多く、感染症を併発することもあります。
膵臓の疾患
- 急性膵炎:急性膵炎は膵臓の突然の炎症であり、激しい上腹部の痛みを伴い、しばしば背中にも放散します。アルコールの過剰摂取や胆石が原因となることが多いです。早期の治療が重要であり、放置すると重篤な合併症を引き起こす可能性があります。
泌尿器系の疾患
- 尿路結石:腎臓や尿管に結石ができると、激しい背部痛や腹痛を引き起こします。結石が尿管を通過する際に痛みが生じ、血尿を伴うこともあります。
女性特有の原因
- 月経痛:月経の際に子宮が収縮することで起こる痛みです。多くの女性が経験するもので、下腹部に痛みを感じます。
- 卵巣嚢腫や子宮内膜症:卵巣に嚢腫ができたり、子宮内膜組織が子宮外に広がる子宮内膜症も腹痛の原因となります。
その他の原因
- ストレスや不安:精神的なストレスや不安が腹痛を引き起こすことがあります。ストレスは消化器系に影響を与え、機能性胃腸障害を引き起こすことがあります。
腹痛は、原因によってその性質や治療法が大きく異なります。腹痛が続く場合や、強い痛みが突然発生した場合は、早めに医療機関を受診することが重要です。自己判断での対処は避け、専門医の診断を受けることをお勧めします。クリニックでは、症状に応じた適切な診察と治療を提供いたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。